『水滸伝』で二番目の登場となる、天孤星の生まれ変わりで梁山泊序列第十三位の好漢・魯智深(ろちしん)。
全身に刺青があったことから、刺青を花に例えて「花和尚(かおしょう)」と呼ばれていました。
この記事では、義に厚い猪突猛進型の好漢が僧侶となり、最後は悟りを開く魯智深の生涯とタトゥーデザインを紹介します。
タトゥーデザインの特徴
刺青の入った花和尚魯智深は情に厚い暴れん坊
魯智深はもともと渭州の役人で、魯達(ろたつ)という名でした。
旅の途中、渭州の町に立ち寄った史進と茶店で会い意気投合。
直後、旅の父娘が悪徳長者に騙され苦しめられていることを聞き、魯達は持ち前の義侠心から相手を懲らしめに行きますが、勢い余って撲殺してしまい逃亡者となります。
代州の雁問県にたどり着いた魯達は、渭州で助けた父娘と再会。
娘は土地の名士である趙員外に見染められ、裕福な暮らしを送っていました。
魯達は趙員外に出家を勧められ、五台山の文殊院というお寺に出家。長老である智真に見込まれ、「智深」という名を授かりました。
出家と数々の騒動
僧侶となった魯智深でしたが、二度に渡り泥酔事件を起こし、山門や金剛像を壊すなど大暴れします。
智真長老は魯智深をやむなく破門。東京の弟弟子を引き取り手として「大相国寺」を紹介しました。
紆余曲折の末、魯智深は大相国寺に着き菜園の番人を任命されます。
着任早々に菜園を荒らす泥棒たちを叩きのめし、彼らから親分と崇められることに。
さらに禁軍の槍術・棒術の師範「林冲」と出会って意気投合し、義兄弟の契りを交わしました。
この後、林冲は無実の罪に落とされて流刑となります。護送中、林冲が殺されそうになるところを魯智深が助けたため再び逃亡生活を送ることに。
東京を出た魯智深は、道中「楊志」と「曹正」という二人に出会い、ニ竜山にこもる山賊を倒し山寨(さんさい)の頭領となりました。
梁山泊入りと花和尚・魯智深の最期
魯智深が山賊の頭領に落ち着いた頃、梁山泊(りょうざんぱく)軍が将軍・呼延灼(こえんしゃく)率いる官軍を撃退。
呼延灼はニ竜山のある青洲に逃げ込み、魯智深と戦いますが勝負がつかず、梁山泊に救援を依頼することに。
駆けつけた梁山泊軍によって呼延灼を降伏させました。これをきっかけに魯智深もニ竜山を引き払い、梁山泊に加入することになります。
その後は歩兵軍の頭領として活躍。
梁山泊軍最後の戦いになる方臘(ほうろう)討伐戦では、敵の将である方臘を捕らえるという功績をあげました。
戦いを終え、杭州の六和寺に宿泊している時、雷鳴のような音が響き魯智深は敵の襲来かと思い飛び起きます。
その音は、銭塘江の逆流による「潮信」だということを聞かされた魯智深は、以前智真長老から授けられた言葉の意味を悟り、座禅を組み瞑想したまま静かに息を引き取りました。
魯智深が記述されている書籍一覧
水滸伝 上 (岩波少年文庫 541) 単行本 – 2001/6/18
まとめ
猪突猛進型でありながら、弱者には決して拳をあげなかった魯智深。しかし良いことをすると裏目に出てしまう人物でした。
智真長老から授かった言葉とは、
「潮を聴いて円し、信を見て寂す」
円寂とは悟りを開くこと。つまりは僧侶の「死」を意味します。
実は智真長老は未来を見る力があり、魯智深がいずれ悟りを開くことが見えていたのでした。
刺青の題材としても大変人気な魯智深。破戒僧と伝えられていることと、外見からただの無法者と見られがちです。ですが、弱者には手を上げないという一面もあります。
花和尚・魯智深の刺青が示す意味はそんな弱者を守れる真の男といったところでしょう。