お釈迦様の最も優秀な弟子として実在した人物、弥勒菩薩(みろくぼさつ)。
どんな菩薩なのか知らない人でも、美しい微笑みをたたえた姿は美術の教科書で一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
ブッタの入滅56億7千万年後の未来にこの世界に現われ悟りを開き、多くの人々を救済するとされる仏様。この次世代のヒーローと目される様な物語には惹かれる人が多いはず。
この記事では、釈迦の次に仏になることを定められた未来仏・弥勒菩薩。弥勒菩薩が進行される意味とタトゥーデザインで用いられることについての刺青の意味についてご紹介します。
デザインの特徴
もっとも有名で多くの人が思い浮かぶデザインのと特徴として、弥勒菩薩は台座に腰かけ、左足の膝上に右足の先をのせております。半跏(はんか)の状態。また右手の中指を頬にあてて思索する姿。思惟(しい)の状態をとっております。
中でも有名な像は、京都の広隆寺に安置されている「宝冠弥勒」です。
出典元:Wikipedia
それとよく比較され、こちらも有名なのは奈良の法隆寺に隣接する中宮寺に安置される菩薩半跏像です。腕の数が二本にも拘わらず(如意輪観音は腕が6本のことが多い)現在は「如意輪観音」とされていますが、造られた当初は弥勒菩薩像であったと推測されています。
出典元:中宮寺
弥勒菩薩とは?
弥勒菩薩とは、仏教においてお釈迦様の次に仏となることが約束された菩薩のことです。
サンスクリット名のマイトレーヤは「慈しみ」の意味をもちます。
弥勒菩薩は、現在仏である釈迦の入滅後、56億7千万年後の未来にこの世に現れる「未来仏」です。
ちなみにこの年数は、弥勒菩薩が修行をしている兜率天(とそつてん)での寿命が4000年。兜率天の1日が地上の400年にあたるという説から計算した「5億7600万年」に由来され、それが後代になり「56億7千万年」に入れ替わったのではと考えられています。
弥勒菩薩は、仏になるために今もなお天上界の兜率天で修行中ですが、いずれは仏になることが確定していることから「弥勒如来」とも呼ばれ、「弥勒菩薩像」と「弥勒如来像」が存在します。
二つの弥勒信仰
弥勒信仰とは、現在仏であるお釈迦様に対して、未来仏である弥勒菩薩を信仰することをいいます。
弥勒信仰には「上生(じょうしょう)信仰」と「下生(げしょう)信仰」があります。
上生信仰
中国・朝鮮半島・日本において、死後は弥勒菩薩が修行をしている兜率天に往生しようと願う上生信仰が流行しました。
しかし、それには大変な修行を要することから、下生信仰が生まれたとされています。
下生信仰
釈迦の入滅から56億7千万年後、弥勒菩薩が人々を救済するため人間界に現れ仏のさとりを開くときに備えて、現世を改革しなければならないという終末論。
あるいは弥勒菩薩を救世主として待つといつ信仰です。
弥勒菩薩の真言とご利益
弥勒菩薩はお釈迦様の後継者なので、現世でのご利益はないとされます。
◆弥勒菩薩の真言
「オン・マイタレイヤ・ソワカ」
◆真言のご利益
死後に弥勒のいる兜率天に生まれ変わり、56億7千万年後に弥勒菩薩が人間界でさとりを開くときに、共に人間界へ生まれ変われると言われています。
弥勒菩薩の特徴
弥勒菩薩像の特徴といえば、頬づえをついて考え込むようなポーズをした「半跏思惟像(はんかしゆいぞう)」が知られています。
この姿が最も多い理由としては、弥勒菩薩が修行中の身であり、人々をいかにして救済しようか深く考えているからだとされています。
他に立像や坐像の弥勒菩薩像も存在しますが、装飾品や身体的な特徴が少ないことから、見分けるのは難しいかもしれません。
弥勒菩薩立像・坐像
平安時代や鎌倉時代になると半跏思惟像は立像や坐像の形式に変わってゆきました。鎌倉時代の運慶・快慶による木像が多く残っています。快慶による最も古い弥勒菩薩立像はボストン美術館に所蔵されています。
弥勒菩薩が記述されている書籍一覧
名文で巡る国宝の弥勒菩薩 (seisouおとなの図書館) 単行本 – 2007/3/1
魅惑の仏像 弥勒菩薩―京都・広隆寺 (めだかの本) 単行本 – 2000/11/1
弥勒の来た道 (NHKブックス) 単行本(ソフトカバー) – 2015/3/27
まとめ
56億7600万年後のこの世に現れ、人々を救済するとされる弥勒菩薩。
実は、日本では七福神の一人として知られる「布袋(ほてい)様」は、中国では弥勒菩薩の化身だとされています。
残念ながら、日本においてはその説は浸透していないようですが、どちらにしてもその穏やかな微笑みは人々を魅了し続けていくことでしょう。
多くの仏様は過去の話。とお思いの方が多いかと思います。ですが、弥勒菩薩の物語は56億7600万年後。つまり未来を暗示する唯一の仏様であります。過去を尊ぶのもよいですが、未来の希望を示す刺青を入れるのも良いかもしれません。
刺青の持つ意味としては未来への希望。
固定したデザインの弥勒菩薩ですが、モチーフとしてはとても魅力的な刺青の題材です。