手彫り、フリーハンドデザインの名手として海外でも知られる彫まさ氏にインタビューを行いました。
過去にはオリジナル画集の出版も出版されるほど、膨大な描画量。その蓄積から生み出されるフリーハンドのデザインは必見です。
国内外で高い評価を誇る、氏の経歴から根源となるモチベーションまでを伺いました。
彫まさインタビュー
群馬県伊勢崎市文身彩肌庵(ぶんしんさいきあん)彫まさと申します。
彫師になった経緯
(彫師になった)経緯は昔から刺青に興味があったことから始まりました。
友人がマシンを持っていて自分で彫ってみたところから始まりましたね。
その前から道具欲しかったりやってみようっていうのはあったんですけど、
今みたいな時代じゃないので。
始めるともう必ずその家業の人が...
なかなか刺青は簡単に始められることではなかったですね。
30超えて始めたのは他の彫師に比べて遅いので、それまでは普通に現場仕事していましたね。
修業時代の学習方法
手彫りは最初からはやっていなかったですねー。
始めて5年ぐらいしてから手彫りを学び始めました。
その頃(の勉強方法)はタトゥーイベント行ったり、動画が多少あったからそれで学んだかな。
ビデオ(VHS)等を買ってみて勉強しました。
その頃国内にはイベントがいっぱいあって、ビデオカメラ持って撮らせてもらったりして学びました
針の組み方やいろんなことを。見たり聞いたりで学んだけれど、有名な刺青の先生たちには簡単にスキルのことは聞けない時代だったと思う。
その頃は(刺青を学ぶことが)大変だったと思います。
自身の刺青の特徴
フリーハンドで直接体に書いてから彫るのが基本になっています。
ステンシルを貼ることも多々ありますけど
和彫り的なものに関してはフリーハンドが基本スタイル。
体に合わせて絵を描くと大きさもそうだと色んなことが途中で変えられたんです。
絵を描く時に関しても基本背中がメインでなんで、額彫り(背景も入れる)をメインとして描いています。
人間の体を見越して描いている感じ。背中に合わせた構図を考えて描いていく。
背中がメインだと考えているので、その延長で腕があるようなイメージで描いてますね。
描くことははたくさんしました。寝る間も惜しんで。
暇さえあれば描いたりしてました。
みんな(他の彫師)たぶん言わないと思うけどちゃんと描いていると思います。
表に出たりしないと思うし。刺青自体が好きだったら寝る間も惜しんで描くことはできると思いますよ。
うまくなりたいとか目標があれば、自然に絵をたくさん描くようになると思います。
みんなそうだと思う。うまい人はやっぱり刺青が好きなんだと思う。
単純にそれがどこまで深いかとかによって上手くなれるかなれないかは変わってくるんじゃないかな。
絵を描くことの重要性
描いてて腕と頭の中で何かを覚えておかないと仮にステンシル貼った時も必ずどこか消えたりするから、
そこも補修したりするわけで、それは描けないとその場で消えちゃったらどうする?ということになる。
また(ステンシルを)貼り直すのかというのじゃダメだと思う。
消えてしまったらちょっと描き足して彫るとか。
そういうのができるということは普段から絵を描いていて、手が覚えているというのが必要じゃないかな。
遠くから見てもはっきり見える刺青がいいと思う。
昔は10メートルとか離れても何が彫っているか分かる。くらいのが昔から刺青の基本と言われている。
人によって刺青のスタイルは異なると思いますが、
パッと見て『どんな刺青が入っていて、迫力があって凄い』っていうのがあるのが自分はいいと思う。
タトゥーアーティストのスキルアップについて
やっぱりいろんな人のいろんな仕事を見ること。
その現場で見た方が勉強にもなる。海外タトゥーコンベンションとかに行くと思うし、すごい勉強になると思う。
行けるのであればやっぱり行った方いい。価値観とか世界観がかなり変わりますよ。
日本のうまい人たちもいっぱいいるからそういう人にただ見せてもらうのではなく
実施自分に彫ってもらうとかじゃないと失礼になってくると思うんです。
見学いいですか?なんて失礼もはなはだしい。
自分で彫ってもらえば、間近で見られるし、そこで話もできるだろうから、そこで得るものでデカいと思うんですよね。
ただやみくもに仕事見せてもらっていいですか?お邪魔していていいんですか?っていうのは失礼だと思う。
好きな作風の人とか、尊敬する人とかに彫ってもらうということが大切だと思う。
スキルにしても何にしても、本で見たり、YouTube動画で見たりするのはまた別な学習法だと思っています。
しかも彫ってもらって。感覚とかも分かるだろうから。そのあたりもスキルアップにつながる。
程度大きさのあるものを彫ってもらって、自分も彫師をしている。と自己紹介をしてから刺青を彫ってもらう方が相手も悪い気持ちがしないと思う。
彫師としてのアイデンティティー
例えば、では自分はこの伊勢崎市でやっています。伊勢崎市で何人かいる彫師の中で一番になりましょう。
一番になった際は群馬県で一番うまい人になります。では次は日本で名のある先生方と肩を並べるぐらいになりたい。
有名になりたい。次が世界あちこち行って色々な人が知っているぐらいな彫師になりたい。
と目標を置いてきた。
少しずつ目標を達成するためには何をするか?そこから日々の努力とかそこで犠牲になるものもある。
俺はもう物事に集中タイプだから他のものを常に犠牲にはしてきた、家族はもちろん子供たちもそう。
それを捨てるぐらいな気持ちでやってきた。実際捨ててるんですけど(笑)。
そのくらいの情熱が俺はあった。
いまはもう落ち着いていろいろな趣味に手を出しているけど。
刺青自体が趣味であり仕事でやってきたから。
今に至るまでは四六時中刺青のことを考えていた。
これは刺青に使えるんじゃないか?手彫りの道具に使えるのでは?など
みんなたぶんそうだと思うけど、本とかもそう。買いあさった。
1ページ2ページしか興味ない本が何万円しても買ったし。
この辺はお金もいっぱい使ってきたし、その分当時の家族とかにも無理を言ってきていると思う。
『これが欲しいから仕事にならない。飯とかいらないんだよ。』とそのぐらい好きだった。
楽しくてしょうがなかった。
色々なことをやってみたいし。
それにはやはり根本的には『(他の彫師に)負けたくない』そこの部分が一番大きいかな。
今現状名のある人とかは『負けたくない』という気持ちは強いと思う。
この人がこうしたら、じゃあこっちはこうしてやろう。とかライバル視できる人がたまたま何人もいて、というのがいい環境になる。
要はレベルを認め合っているという存在が必要。
そのへんを選ぶというか、付き合う人をも考えた方が自分のレベルを上げるためにはそれも必要だと思う。
自分がやってきたことの結果というのは人のつながりもできているし、自分の成長にもつながる。
でも結局ダメなことをやっている人って、消えていく人もいます。
『負けたくないな』ということが刺青の彫師としての根本ですよね。
文身彩肌庵(ぶんしんさいきあん)
彫まさ
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