安産・子育ての神として広く信仰されている『鬼子母神(きしもじん/きしぼじん )』。
お釈迦様が説かれた『法華経』というお経の中に説かれる神様です。
男女ともに子供を案ずる刺青の象徴として人気の題材です。ですが、皆様は鬼子母神が悪鬼と呼ばれていた過去についてはご存じでしょうか?意味が分かればタトゥーの見え方も変わってきます。
魅力的な刺青を入れるためにこの記事では、悪鬼と人々に恐れられていた鬼子母神が『神様』と呼ばれるようになるまでの逸話を紹介します。
デザインの特徴
鬼子母神の一番の特徴は子供を抱えており、この特徴は外せない。と思う方もいらっしゃると思いますが、仏像で言えば関東と関西では少し違うようです。
関東では総髪で合掌した姿をしており、子供を抱えていない。関西では総髪ではあるものの角があり、口が裂け、子供を抱えている(あるいは、左手で子供と手を繋ぐ)姿である。とはいえ仏画で残っているものは関東型の子供を抱えている姿が多く描かれているようです。
右手には吉祥果(きっしょうか・きちじょうか)をもっています。ザクロを持たせるようになったのは中国文化の影響です。透き通るような羽衣を纏っており、単衣はカラフルなデザインが特徴的です。
仏画を題材にした刺青の多くは細かいデザインの物が多く鬼子母神も同様にディティールが細かいデザインとなります。バストアップのデザインではなかなか表現が難しいです。その為、刺青のデザイン作成の際は大きい画面を想定してのデザインをお勧めします。
子供を連れ去る悪鬼
鬼子母神はインドで訶梨帝母(カリテイモ)とよばれ、夜叉毘沙門天(クベーラ)の部下の武将八大夜叉大将・般闍迦(パーンチカ)に嫁ぎ、たくさんの子供を産みました。
カリテイモは子の母であるにもかかわらずその性質は暴虐で、500人(千人または一万人とも)の子供を育てるだけの栄養をつけるために、人間の子供を捕らえて食べていました。
そのため人々から『悪鬼』と恐れ憎まれていました。
子供たちが次々と捕らわれることを恐れ苦しんだ人々は、お釈迦様に相談しました。
お釈迦様の教えと悟り
お釈迦様は人々の訴えに一計を案じることに。
カリテイモがもっとも可愛がっていた一番末の子供を、神通力で隠してしまわれました。
カリテイモは子供がいなくなったことに嘆き悲しみ、世界中を必死に探し回りますがもちろん見つかるはずがありません。
途方に暮れたカリテイモはお釈迦様の元に行き、我が子がいなくなり見つからないことを話して助けを求めました。
お釈迦様はカリテイモに、「500人もの子供がいるのにたった1人いなくなっただけで取り乱し、嘆き苦しみ私に助けを求めている。たった数人しか子供がいない人間の親の悲しみが、今のおまえにはわかるのではないか?」と、我が子を失うことの悲しみと命の大切さを説かれました。
カリテイモはお釈迦様の教えを受け改心し、人間の子供は食べないと誓うと、お釈迦様は隠していた子供をカリテイモの元へ返されました。
そしてお釈迦様はカリテイモに戒律を授け、カリテイモは鬼子母神として仏教・法華経の教えと子供を守る善神として活躍するようになったのです。
鬼子母神とザクロ
鬼子母神は右手にザクロを持っていますが、それには言い伝えがあります。
鬼子母神が、もしまた人の肉を食べたくなってしまったら……。
お釈迦様は人の肉の味に似ているザクロを渡し、「人を食べずにザクロを食べて我慢するように」と持たせたことがザクロを持つ由来とされています。
しかしこれは俗説で、もともとはザクロではなく『吉祥果(きっしょうか・きちじょうか)』といわれる魔除けや子孫繁栄をあらわす縁起のよい果物だったといわれています。
鬼子母神は、ザクロを人の代わりに食べるためではなく、子供を守る神として子孫繁栄を願い吉祥果を持っていたのが本当の由来だとされています。
鬼子母神が記述されている書籍
鬼子母神 (仏教コミックス―ほとけさまの大宇宙 (27)) 単行本 – 1996/9/1
手のひらにザクロ : ひみつのささやきが聞こえたら Kindle版
鬼子母神が題材の絵
まとめ
人々に憎まれていた鬼子母神は、安産・子育てをつかさどる神様として、人々に崇拝されるようになりました。
悪行をはたらいていたのは、我が子を育てるためなればこそ。そんな人間味あふれる母親像こそが、現在も人々に愛されている鬼子母神の魅力なのでしょう。
海外では子供を思うタトゥーといえば子供のポートレート、名前を彫るなどが多いかと思いますが、日本では子育ての象徴として鬼子母神の刺青を彫るのもよいのではないでしょうか?