明王の代表的な仏様『不動明王』を知る人は多くみられますが、実は『愛染明王(あいぜんみょうおう)』は意外に知られていませんが、不動明王が姿を変えて現れた仏様といわれています。
一般的には知られていないですが、刺青好きには有名で刺青の題材としても多く使用されております。
恋愛成就などさまざまな願い事の効果が早く現れるとされる愛染明王。
この記事では、愛染明王のご利益や真言の効果、デザインの特徴などを紹介していきます。
デザインの特徴
愛染明王の特徴と見分け方
他の明王と愛染明王を見分ける特徴は、大愛と大慈悲を表す赤い身体に一面三眼、腕が6本。
燃え盛る日輪を背にして紅蓮(ぐれん)の蓮華座(れんげざ)に座っています。
頭上には強さの象徴『獅子冠(ししかん)』と、邪欲を切り捨て正しい方向へ導く意味を持つ『五鈷鉤(ごここう)』を載せています。後背に日輪を背負って表現されることが多いです。
三つの眼は仁愛と知恵と勇気の三つの徳を表します。
第一の手
腕が六本あるのは、六道輪廻の衆生を救う意味を持ちます。
上から第一手は左右二つで「息災」を表していて、左手の五鈷鈴(こんごうれい:五鈷杵(ごこしょ)の一方のにぎりに鈴がついたもの )は、般若の智恵の音と響きにより衆生を驚愕させて、夢の様なこの世の迷いから目覚めさせることを表します。
右手の五鈷杵は、衆生に本有の五智(大日如来に備わる5種 の智慧)を理解し体得させて、愛染明王の覚りへと到達したことを表します。
第二の手
愛染明王の一番の特徴として「敬愛」と「融和」を表す弓と矢を持っており、左第二腕に天弓(てんきゅう)と呼ばれる弓、右第二腕には矢を持っております。そして天に矢を放つポーズをしている愛染明王を天弓愛染明王と呼ぶこともあります。
そしてその矢は心を結びつける愛のキューピッドのような役割を果たします。
放たれた矢はすぐに目標に到達することから降魔や除災、男女の縁結びに多大な効果を表すといわれています。
第三の手
第三手は左右二つで人生の迷いや煩悩による苦しみの世界を打ち払う「増益」と「降伏」とを表しております。
左手の拳を握るのは、その手の中に摩尼宝珠(まいほうじゅ/にょいほうじゅ:仏教において霊験を表すとされる宝の珠のこと )を隠し持っていて、これは衆生が求めるあらゆる宝と財産や、生命を育むことを表しております。
右手の赤い未敷蓮華(みふれんげ)は、それらの衆生の財産や生命を奪おうとする「四魔」(仏道修行の妨げとなる4種のもの)に対して魔を調伏することを表して居ります。
これから刺青を考えている方へのアドバイスとして、愛染明王は腕の数が多く、座った構図が多いことから広いスペースを使用する刺青がおススメです。
愛欲を悟りへと導く愛染明王とは?
愛染明王とは、大日如来の化身とされる密教特有の『忿怒(ふんぬ)相』をした明王の一つです。
煩悩を断ち切り悟りへの道へ導くことが明王の役割とされます。
その中で愛染明王は、煩悩の中でもっとも断ち切ることが難しい『愛欲・性欲』を利用して悟りへ導こうとする明王なのです。
この教えに、愛欲のほかに金銭欲や権力欲などと縁が深い、武士や遊女たちにも信仰されてきました。
愛染明王の真言とご利益
愛染明王のご利益には、『恋愛成就・恋愛を妨げるものの排除・人間関係や夫婦関係の改善・家庭円満・無病息災』などがあげられます。
愛も欲の一つです。他の仏様は欲を絶つことを教えとして説いておりますが、愛染明王は唯一欲と愛を両立させられる仏様です。
愛染明王の真言を唱え続けていると、実際にご利益の効果を感じることができるのだといいます。
愛染明王の梵字
読み方「ウン」
真言の効果
愛染明王の真言は、自ら唱えることで強い効果を実感できるといわれますが、聞き流すだけでも効果を得られるのだとか。
そんな強い力を持つ愛染明王の真言は、
「オン・マカラギャ・バゾロシュニシャ・バザラサトバ・ジャク・ウン・バン・コク」
と発音し、真言が言霊(ことだま)となり恋愛のおまじないに効果絶大だといわれています。
大切なのは真言の意味ではなく、声に出して唱えることで音(波動)が振動となり世界へ広がり、神に届いて願いが叶うのだということです。
愛染明王の真言は30万回唱えると、あらゆる異性から愛され意中の人と結ばれるといわれており、唱えれば唱えるだけ潜在意識に入り込みやすくなります。
半覚醒(はんかくせい)時など顕在意識のバリアが薄い状態のときに唱えるのが効果的だと考えられることから、毎朝早朝に真言を唱える習慣をつけるのもいいかもしれませんね。
愛染明王が記述されている書籍
仏像100のひみつ (エイムック 4445) ムック – 2019/9/18
戦国武将の守護神たち 単行本(ソフトカバー) – 2011/4/16
写真・図解 日本の仏像 この一冊ですべてがわかる! Kindle版
愛染明王が題材の絵
まとめ
人が人生の中で、もっとも心を捉(とら)われてしまうのが恋愛だといわれます。
愛染明王は、そんな人間の愛欲や執着心を浄化して悟りへ導く力を持たれた仏様なのです。
軍神としての愛染明王を信仰する直江兼続が、兜(かぶと)の前立てに『愛』の文字をあしらった、というのは有名な話ですね。
そんな愛染明王のご利益をより早く感じたいと思うならば、一度愛染明王の像があるお寺へ出向いてみてはいかがでしょうか。
また刺青の題材として人気のモチーフで手に持っているものに特徴がありますので、持っている物の手を間違えないようにしましょう。